~税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約 ~

2018年9月27日付の財務省のプレスリリースによれば、日本は「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(BEPS防止措置実施条約、MULTILATERAL CONVENTION TO IMPLEMENT TAX TREATY RELATED MEASURES TO PREVENT BASE EROSION AND PROFIT SHIFTING, ”MLI”)の受諾書を本条約の寄託者である経済協力開発機構(OECD)の事務総長に寄託したとのことです。これにより、日本については2019年1月1日にMLIが発効することとなります。

MLIは、BEPS(税源浸食及び利益移転)防止のための手段の一つであり、すでに各国間で締結されている租税条約を個別に改定することなく、MLIによって既存の租税条約をいわば“上書き”するものです。
なお、MLIは両締結国がその租税条約をMLIの対象とすることを選択し、かつ、MLIが両締結国について発効する場合に、順次、その租税条約について適用されることになります。
2019年1月1日に日本との租税条約の“上書き”が行われるのは、以下の5か国です。

  • イスラエル
  • 英国
  • スウェーデン
  • ニュージーランド
  • ポーランド

ただし、各国においても順次MLIへの参加が見込まれており、最終的には日本が対象租税条約として寄託者に通告した以下の39か国・地域の租税条約が対象となる見込みです。

オーストラリア、ブルガリア、カナダ、中国、チェコ、エジプト、フィジー、フィンランド、フランス、ドイツ、香港、ハンガリー、インド、インドネシア、アイルランド、イスラエル、イタリア、カザフスタン、韓国、クウェート、ルクセンブルグ、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロバキア、南アフリカ、スウェーデン、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦及び英国

BEPSはOECD加盟国ならず、数多くの国・地域が参加している取り組みです。このようにBEPSを通じて、国際税務に関する取扱いが徐々に統一化されていき、また、その他、租税条約の情報交換規定や税務行政執行共助条約に基づき、納税者の情報交換や税金の徴収に関しても、各国の税務当局同士の協力体制が整ってきております。

このように各国の税務当局の協力体制がとられることにより、納税者自身が知らなかった/意識していなかった事実関係や取り扱いに基づいて、課税や徴収が行われる可能性も出てくると思われます。

今後の国際的な取引について、今まで以上に慎重に課税の検討を行ない、思わぬ課税が発生しないようにご注意ください。