デンソー12億円課税取り消し 最高裁判決
2017年10月25日付の新聞報道によると、デンソーが行っていた、2008年3月期及び2009年3月期のタックスヘイブン税制の追徴金額約12億円の取消請求訴訟に関し、最高裁判所より、取消を認める旨の判決が行われたとのことです。
タックスヘイブン税制とは、税率の低い国・地域にある子会社、一定の要件(適用除外基準)を満たさない限り、子会社で稼得した所得を日本の親会社に合算して課税する制度です(現行制度であり、平成30年4月1日以降開始事業年度より、制度の改正が行われます)。
この裁判は、名古屋国税局がデンソーのシンガポール子会社の事業を、「株式の保有」であるため、タックスヘイブン税制の「適用除外基準」を充たさないものとして、課税を行ったものの、デンソー側は、子会社の主たる事業は地域統括事業であり、適用除外要件を満たすものと主張していました。
本判決で、最高裁判所は、子会社には東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の事業を効率化する目的があり、活動には経済合理性があったとものと判断しているとのことです。また、「財務や物流改善などの業務は多岐にわたり、相当の規模と実体があった」として、更正処分を取消しています
また、タックスヘイブン税制で子会社の主な事業の判断基準について「事業活動の収入や所得、人数、店舗、工場などの状況を総合的に考慮するのが相当」としているとのことです。
タックスヘイブン税制は非常に複雑で、税率の判定や適用除外基準の判定、部分合算課税の範囲等々多岐にわたる判断が必要となります。また、タックスヘイブン税制の適用は毎年判断が必要であり、課税が行われる場合には大きな金額となるケースが多くなります。
このため、海外に子会社を保有している場合には、タックスヘイブン税制の適用には十分注意する必要がります。