~トヨタ自動車源泉税漏れ~

2017年10月13日付の新聞報道によると、トヨタ自動車で源泉税の徴収漏れがあり、3億円超の追徴課税があったとのことです。

新聞報道によると、本件の追徴の理由は主に下記の二つのようです。

  • ドイツ子会社やフィンランドの会社に対する車両やエンジンの使用料支払時の源泉漏れ
  • 海外で定年を迎えた出向者への退職金支払時の源泉漏れ

それぞれの取引についてみていきたいと思います。

<使用料について>

使用料に関する源泉税はその課税の範囲が、所得税法と各国の租税条約で異なっているケースが多いです。また、源泉税率も、どの国に対して支払うかによって異なることとなります。

このため、特に海外に対する使用料の支払い時には、以下のような内容を確認する必要があります。

  1. どのような内容に対する支払なのか(国内源泉所得が含まれていないか)
  2. 所得税法上、その支払いは源泉税が課税されるのか
  3. 支払先国との間の租税条約で課税の範囲が変わっていないか
  4. 適用される税率

また、租税条約による減免措置を受ける場合には、租税条約の届出書を、使用料の支払い前に提出する等の手続きが必要になることにも留意が必要です。

本件については、経理上のミス、との報道ですので、租税条約の適用税率の誤りや、租税条約の届出書の提出漏れ等のミスが発生しているのではないかと推測します。

<退職金の支払いについて>

国外に居住する従業員に対して日本の会社が支払う給与については、日本の国内源泉所得がある場合には、日本で源泉を行う必要があります。 退職所得についても同様で、日本の会社が国外に居住する従業員に対して支払う退職金のうち、日本での勤務期間分に対応する退職所得は、国内源泉所得として日本で課税されることとなり、原則として源泉が必要となります。
ただし、居住者に対して支払う退職所得に対する税額とのバランスをとるために、ご本人の選択により、居住者と同様の税額計算を行うという、退職所得の選択課税制度の適用が可能です。

退職所得の選択課税制度を利用する場合でも、企業としては通常税率で源泉徴収を行ったうえで、ご本人が(納税管理人を通じて)確定申告をして還付を受けることとなります。

本件については、企業としては退職所得について源泉が必要な金額があったものの、その計算が漏れてしまっていたものと推測いたします。

上記のように、本件については、単純な経理上のミスが重なって起きてしまっているものと推測されます。ただし、海外取引の増加や複雑化の影響によって、国際税務に関する実務が複雑化している影響でミスが発生しやすくなっている状況でもあります。

源泉税の調査では、特に国外に対する支払について重点的に調査を行うようなケースもありますので、国外に対する支払=国際的な取引については、常に留意しておくことが必要です。