2019年10月より消費税の軽減税率制度が導入されます。

軽減税率の適用となる業種の事業者の皆様は準備を始められていることとは思いますが、2018年8月5日の日経新聞に「こんな記事」 が出ておりました。

軽減税率が導入されると、持ち帰り用の食材は軽減税率の8%、店舗等での飲食には10%という異なる消費税率が適用されることとなります。このため、同じ本体価格100円の食品でも、持ち帰れば税込108円、店内で飲食すれば税込110円となります。

持ち帰るのか店舗で飲食するのか、購入した方の意思によるものなので、販売する事業者側からではわからないことが多々あると思われます。代表的なのは、ハンバーガーショップで、持ち帰りの場合も店舗での飲食の場合もどちらもありえます。今ではイートインスペースのあるスーパーやコンビニが数多くあります。販売する側としては、どのように判断すればよいのでしょうか。

国税庁から公表されている「消費税の軽減税率に関する取扱通達」によれば、「当該飲食料品の提供等を行う時において、例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる」としており、販売時に顧客に意思確認等を行うこととなると思われます。

しかし、スーパーやコンビニ等で大量の食材等の買い物をした顧客に、一品一品持ち帰りなのか、飲食するのかという意思確認を行うのは、非常な手間となり、店側にも顧客側にもデメリットしかないものと思われます。

この記事によれば、財務省は事業者に対して、持ち帰りでも飲食でも税込価格を統一する方法を示唆しているとのことです。 すなわち、持ち帰りでも税込み110円、飲食でも税込み110円となるのです。こちらは軽減税率を導入しているドイツ等ですでに導入されている方法で、私もPHP総研の発行する「THE 21」(2014年1月号)という雑誌の「世界の消費税はどうなっているのか」 というコラムでインタビューを受けた時にお話しをしてきたところです。

この方法を採用すると、消費者は持ち帰りでも飲食でも同じ価格を支払うこととなります。 それでは軽減税率は何のために、導入されたのでしょうか? 軽減税率の導入は「逆進性」の緩和とされています。すなわち、消費税では所得の多寡にかかわらず全ての人が同税率を負担するので、同額を支出した場合は低所得者ほど所得に占める税負担割合が大きくなります。これに対して、生活必需品については標準税率より税率を低くすることにより低所得者の税負担を緩和しようというものです。
軽減税率が逆進性の緩和につながるのか?という根本的な問題もあるのですが、さらに、結局持ち帰りでも飲食でも税込価格が変わらない、ということになった場合、どうでしょうか。 税負担割合としては、計算上は軽減税率の方が割合は低くなりますが、本体価格が値上げされている状況なので、消費者の負担金額に変わりはありません。

他方、軽減税率を厳密に運用しようとした場合、店舗側の負担が大きくなりすぎ、小さな店舗ではイートインスペースの廃止等により持ち帰りのみにする等サービスの改悪や、負担コストを回収するための値上げ、といった事態が想定されます。 
結局のところ、軽減税率の導入は、事業者側の負担ばかり増えて消費者にもメリットがない、何のための制度だろうか?、ということになりかねないことになります。

なお、以上は販売する事業者のお話でしたが、購入する事業者も軽減税率適用分も標準税率適用分、きちんとわけて記帳することが求められることとなります。現状、軽減税率の適用は食品と新聞等のみですので、あまり大きな金額ではないかと思いますが、来客用のお水やお茶、コーヒー等の代金に係る消費税率と会議のために喫茶店を利用した場合のコーヒー等の代金にかかる消費税率が異なってきます。
このため、購入する事業者としても、ひと手間増える、ということをお忘れなく。。。